日本陽電子科学会会報「陽電子科学」

■第1号(2013年)  [PDFファイル(15.6 MB)

  • 巻頭言
  • 入門講座
    • 高分子の分子間空隙におけるポジトロニウムとその利用  [PDFファイル(2.3 MB)
      小林 慶規(産総研),島津 彰(日東電工)
    • 高分子に陽電子を打ち込むとその一部は電子と結合してポジトロニウム(Ps)を形成する.ポジトロニウムは高分子中の非晶質領域内の分子間空隙に局在化する.パラポジトロニウム(p-Ps)は空隙中で自己消滅するが,オルトポジトロニウム(o-Ps)はピックオフ消滅(周囲の原子・分子に束縛されている電子と陽電子の2光子消滅)する.オルトポジトロニウムのピックオフ消滅寿命は,ポジトロニウムが存在している空隙の大きさを反映し,空隙が大きいほど長くなる.その性質を利用して,気体分離膜,水処理膜,燃料電池用電解質膜など機能材料中の分子間空隙や多孔質物質に含まれるナノ空隙を調べることができる.ここでは,高分子中のポジトロニウムの形成と消滅に関する基礎的事項およびポジトロニウムを利用した高分子機能材料解析について解説する.

    • 陽電子放射断層撮影 (PET) 装置とその検出器  [PDFファイル(3.7 MB)
      澁谷 憲悟(東大)
    • 陽電子の利用技術として,最も広範に実施されているPET(陽電子放射断層撮影)の概要を理工学的な見地から解説する.あわせてPETにおける消滅放射線の計測に用いられてきたシンチレータ結晶とシンチレーション検出器のあらましを紹介する.PET装置は放射線検出器の集合体であり,その要素技術や検出器の基本原理は理工学分野における放射線計測と変わりはない.ただし,計測対象が生体であるがゆえに種々の要請や制約が生じ,それらに対応するように様々な周辺技術を取り入れることで発達してきたという特殊性を述べる.

    • 陽電子マイクロプローブ  [PDFファイル(3.6 MB)
      大島 永康,鈴木 良一(産総研),藤浪 真紀(千葉大院工)
    • 径数十μm以下の陽電子ビームを用いた分析装置を陽電子マイクロプローブ(positron microprobe: PM)と呼ぶ.PMは,陽電子消滅法の位置分解能を従来法に比べ1000倍程度改善し,その走査測定により欠陥分布を視覚的に評価することを可能とする.PMの開発において,他の荷電粒子ビームにはない特徴的な光学系を構築する必要があり,本稿ではPMで用いられる要素技術やその応用研究例を展望する.

  • 最近の研究から
    • 陽電子消滅および3次元アトムプローブによる原子炉圧力容器鋼の照射脆化機構に関する研究
      —フィンランド・ロビーザ炉監視試験片を例として—  [PDFファイル(2.8 MB)
      外山 健,蔵本 明,野沢 康子(東北大金研),Matti Valo(フィンランド技術研究センター), 清水 康雄,井上 耕治,長谷川 雅幸,永井 康介(東北大金研)
    • 原子力発電所を安全に運用する上で最重要な課題の一つとして,中性子照射による原子炉圧力容器鋼の脆化があげられる.我々は陽電子消滅法と3次元アトムプローブ法を用いて,脆化の主因である照射欠陥および微細な溶質・不純物クラスターを調べている.本稿では,フィンランド原子炉の監視試験片を例として,照射脆化のメカニズムを論じた最新の研究を紹介する.

    • ポジトロニウムによるCP対称性の破れの検証  [PDFファイル(1.8 MB)
      山崎 高幸,難波 俊雄(東大素粒子セ),浅井 祥仁(東大院理),小林 富雄(東大素粒子セ)
    • 対称性の破れはクォークセクターにおいては高い精度で測定されているが,レプトンセクターにおいては未発見のままである.我々はポジトロニウム崩壊において,ポジトロニウムスピンと崩壊ガンマ線の角度相関を利用してCPを破る崩壊を探索した.結果として,そのような崩壊は見つからなかったが,本実験によりCPの破れのパラメータCCPに対して, -0.0023<CCP<0.0049という従来よりも7倍強い制限を得ることができた.

    • PPMAによる一軸延伸ポリエチレン中の自由体積空孔の評価  [PDFファイル(1.7 MB)
      岡 壽崇(東北大高教セ/東北大院理),大島 永康,鈴木 良一(産総研),上殿 明良(筑波大),藤浪 真紀(千葉大院工),小林 慶規(産総研)
    • 延伸低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの自由体積空孔をPositron Probe Microanalyzer(PPMA)で調べた.Ortho-positronium(o-Ps)寿命の変化から延伸で自由体積空孔が小さくなること,o-Ps強度は低密度ポリエチレンではほとんど変化しないが高密度ポリエチレンでは増加したことから後者の延伸では結晶の破壊が起こっていることなどが示唆された.PPMAが延伸高分子中の自由体積空孔評価の強力な手法であることを紹介する.

  • 研究室紹介
  • 関連集会の案内  [PDFファイル(783 kB)
    • 日本物理学会第68回年次大会報告
    • 日本金属学会2013年春期(第152回)講演大会・日本鉄鋼協会第165回春季講演大会報告
    • 2013年度 第6階陽電子科学研究交流会
    • 京都大学原子炉実験所専門研究会「陽電子科学とその理工学への応用」のご案内

  • 共同利用施設から  [PDFファイル(1.6 MB)
    • KEK 物質構造科学研究所フォトンファクトリー低速陽電子実験施設
    • 産総研つくば中央第2事業所 低速陽電子ビーム利用施設
    • 京都大学原子炉実験所における高強度陽電子ビームラインの開発

  • 学会印象記  [PDFファイル(1.4 MB)
    • 第50回アイソトープ・放射線研究発表会印象記
    • POSMOL2013報告
    • POSMOL2013 に出席して(1)
    • POSMOL2013 に出席して(2)
    • POSMOL2013 に出席して(3)

  • その他  [PDFファイル(885 kB)
    • 事務局から
    • 日本陽電子科学会会報「陽電子科学」投稿規定および投稿の手引き
    • 編集後記

第1号表紙